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木質チップの貯蔵時における品質劣化と環境リスク——高水分が引き起こす微生物増殖とエネルギー損失のメカニズム

2026年3月11日

貯蔵工程における水分の影響

木質バイオマス燃料の安定供給において「貯蔵」は不可欠な工程ですが、水分が高め(一般に36%W.B.以上)のチップを堆積・貯蔵することは、燃料品質の低下や周辺環境への悪影響を招くリスクを伴います。これらの問題の主要因は、チップに含まれる過剰な水分による微生物活動の活性化にあります。

高水分チップが招く技術的・環境的課題

  • 微生物の増殖と自己発熱によるエネルギー損失
    木材成分であるセルロースやヘミセルロースは、高水分環境下でカビや腐朽菌などの微生物の栄養源となります。そのため、水分の高い木質チップは微生物等の活性条件が揃うために発酵が起きやすくなります。微生物がこれらの成分を分解する際、チップが本来持つ熱エネルギーを消費するため、燃料としての発熱量が低下します。また、分解過程で発生する「自己発熱」は、チップ山の内部温度を上昇させ、さらなる品質劣化や、最悪の場合には自然発火のリスクを増大させます。木質部の分解による炭素分の消失(Dry Matter Loss)は、条件によりひと月当たり2~4%ともされており、燃焼により得られるエネルギー量の減少につながります[LWF, Merkblatt 11, 2012]。
  • 揮発性有機化合物(VOC)による臭気問題
    微生物による腐敗や発酵が進行する過程で、さまざまな揮発性有機化合物が発生し、特有の腐敗臭を放ちます。大規模な貯蔵施設において適切な水分管理が行われない場合、この臭気が周辺地域へ拡散し、近隣住民からの苦情や事業への信頼性低下につながる環境リスクとなります。
  • 作業環境の悪化と健康への影響
    堆積内部で増殖したカビなどの菌類は、粉塵とともに胞子として飛散します。これは作業員の呼吸器系疾患の原因となる可能性があり、労働安全衛生上の課題を浮き彫りにします。

写真 チップのカビの発生状況(チップ表層付近)

乾燥による保管性能の向上と品質維持

これらのリスクを抑制するためには、貯蔵前にチップの水分を適切に低減させることが有効です。水分を一定水準(一般に20%〜25%以下)まで下げることで微生物の活動を停滞(生物的分解の抑制)させ、エネルギー損失を最小限に抑えながら長期保管が可能になります。

屋外での保管を行う場合には、「透湿防水シート」等を用いた適切な被覆管理により、外部からの雨水を遮断しつつ、内部の発酵熱を水分の蒸散に利用(発酵乾燥)することで、品質を維持しながら乾燥を促進させることが可能となります。

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木質バイオマスの保管における水分管理の意義

貯蔵中におけるチップの品質劣化は、事業者が購入したエネルギーが時間とともに消失していることを意味します。事前の乾燥および貯蔵時の水分管理は、保管スペースの確保にとどまらず、木質燃料という「資産」の価値を維持し、地域資源の有効活用を図るための運用プロセスということができます。

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