取引形態が乾燥への意欲を左右する現状
木質バイオマス燃料の取引において、水分の扱いは収益に直結する重要な要素です。しかし、国内の多くの現場では、依然として水分管理の重要性が価格に反映されにくい取引形態が主流となっています。事業の収益性を最大化するためには、乾燥によって向上した燃料価値を正当に評価する取引基準への理解が不可欠です。
日本における主要な取引形態と課題
国内で見られる主な取引形態には以下の課題が存在します。
- 重量ベース(生重量トン)取引 水分を多く含むほど重量が増し、見かけ上の販売額が高くなる構造です。この形態では供給側に乾燥させる動機が働かず、結果として利用側(発電所等)が「水」に対して代金と輸送費を支払うという不合理が生じます。
- 水分条件付き一定額取引 「水分〇%以下」という条件を設け、一定単価で取引する形態です。最低限の品質は担保されますが、条件を大幅に上回る高品質(低水分)なチップをつくっても価格に反映されず、供給側の努力が報われない側面があります。
- 絶乾重量での取引 水分状態に関係なく、絶乾重量tあたりの固定金額で行われる取引きです。運搬時の積載量や燃費等の点では乾燥による間接的な効果はあるものの、乾燥させることによる直接的な価格への反応はありません。
乾燥の価値を最大化する評価基準
乾燥チップが持つ「高位のエネルギー密度」「ボイラー効率の向上」「保管性の改善」等を価格に反映させている取引形態です。欧州などの先進地では多い事例ですが、国内でも徐々に広まって来ているものと考えられます。
- 低位発熱量(エネルギー量)ベースの取引 重量ではなく、含まれる熱量に対して対価を支払う仕組みです。乾燥によって単位量(重量や容積)あたりの熱量が高まれば、それに応じて販売価格も上昇します。
- 品質加算(プレミアム)の適用 ドイツの事例では、未乾燥チップに対し、乾燥チップの販売価格が熱量の増加分を上回る比率(事例では44%増)で設定されるケースが確認されます。これは、乾燥燃料が利用側のメンテナンスコスト削減や稼働率向上に寄与する「付加価値」を、市場が正当に評価している結果と考えられます。

適正な市場形成への転換
木質バイオマスの導入検討時には、木質チップの単価は関連事業者にとって経済的に大きく影響します。したがって、それぞれの利益配分と役割分担を考える上で、木質チップの水分に注目した品質特性とその価値を踏まえることが今後より重要となると考えられます。こうした点を公平に評価していくためは、木質チップを乾燥することにより得られるメリットを定量的に把握し、価格形成に関する検討を行うとともに、広く発信していくことが必要となります。

