現場で広く使われるブルーシートの限界
木質チップの屋外保管において、最も身近でコストの低い養生資材といえば「ブルーシート」です。多くの現場で、降雨による加水を防ぐためにブルーシートが活用されています。しかし、実際にブルーシートで覆ったチップ山の内部を確認すると、表面は乾いているように見えても、内部がしっとりと濡れていたり、白いカビが発生していたりするケースが少なくありません。
雨を防いでいるはずなのに、なぜチップの乾燥が進まないのか。その理由は、ブルーシートが持つ「完全な遮断性」にあります。
「蒸れ」と「結露」:ブルーシート内部で起きていること
第1回で解説した通り、枝葉を含む木質チップは堆積させると微生物の活動により「発酵熱」を発します。この熱によってチップに含まれる水分は水蒸気となり、山の外部へと移動しようとします。
→『第1回:木質チップの品質を安定させる「発酵熱」活用の理論と実践』を振り返る
ここでブルーシートを使用している場合、以下のような物理現象が発生します。
- 水蒸気の滞留:ブルーシートは空気も水蒸気も通さないため、蒸発した水分がシートの裏側に溜まります。
- 結露の発生:シート裏面に達した水蒸気は、外気で冷やされたシートに触れることで再び液体(水滴)に戻ります。
- 再加水のループ:結露した水滴が再びチップ山の上部に滴り落ち、チップを濡らしてしまいます。
つまり、ブルーシートによる被覆は、チップ山を「サウナ状態」にしているようなものです。雨は防げても、自ら放出した水分が内部で循環し続けるため、燃料として理想的な水分まで下げることは極めて困難です。
透湿防水シートが乾燥を促進するメカニズム
一方、本試験で用いた透湿防水シートは、ブルーシートとは決定的に異なる特性を持っています。それは「適正な使用条件ではほとんどの液体の水は通さず、気体の水蒸気だけを通す」という性質です。
この特性により、チップ山内部では次のような理想的な乾燥プロセスが進行します。
- 発酵熱による蒸発:チップ内部で熱が発生し、水分が水蒸気になります。
- スムーズな排湿:水蒸気がシートの微細な穴を通り抜け、外気へと放出されます。
- 一方通行の防水:外部からの雨水はシート表面ではじかれ、内部に浸入することはありません。
実証試験のデータによれば、透湿防水シートを用いた区画では、発酵熱の発生とともに概ね均一に水分が低下していく結果が得られたのに対し、ブルーシートで保管したチップは乾燥度合いが少なく、山の内部で水分のバラつきがあり、チップの表面には菌類や植物の発芽を確認しました。

「雨よけ」と「乾燥」の目的を使い分ける
ブルーシートは、紫外線で劣化しやすく、破れやすいという短所はありますが、すでに乾燥したチップを一時的に雨から守る「保管」に使用できないこともないでしょう。しかし、生チップの水分を積極的に下げ、燃料としての品質を高める「乾燥」を目的とするならば、ブルーシートはむしろ逆効果になるリスクを孕んでいます。
「安価だから」という理由でブルーシートを選択しても、結果として乾燥が進まず燃料品質が向上しなければ、ボイラーの燃焼効率低下や搬送コストの増大という形で、目に見えない損失を招くことになります。
まとめと次回の予告
第2回では、ブルーシートと透湿防水シートの物理的な違いと、それが乾燥結果に与える影響について整理しました。結論として、発酵熱を乾燥の動力として活かすためには、水分を外に逃がす「透湿性」が不可欠です。
次回の第3回では、もう一つの一般的な乾燥手法である「建屋(ストックヤード)での保管」を取り上げます。多額の建設費用をかけて建屋を作る場合と、シートで屋外保管する場合では、コストや乾燥能力にどのような差が出るのか。実務的な視点で比較検証します。

