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バイオマス燃焼の環境的課題——不完全燃焼の抑制と大気汚染リスクの低減メカニズム

2026年3月11日

バイオマス燃焼における排気の問題

木質バイオマスの利用は地球温暖化対策として有効であると同時に、大気汚染への対策も意識する必要があります。大気汚染は、高血圧、肥満、喫煙に次いで人類第4の健康リスクとされており、汚染空気が原因で650万人が早期死亡しているという深刻なデータ(WHOレポート2014)もあります。この大気汚染の原因の一つが、化石燃料やバイオマス燃料の不完全燃焼により発生する煤(すす)やPM(粒子状物質)です。特に、バイオマス燃焼はPMの主たる排出源として認識されています。

高水分チップが招く環境的課題

水分を多く含んだ木質チップをそのまま燃焼させると、以下のような環境的課題を引き起こすリスクが高まります。

  1. 不完全燃焼の誘発と有害物質の増加:水分の高い木質チップの燃焼は不完全燃焼を引き起こすことがあり、これにより一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)、PMの増加をもたらし大気汚染の一因となります。
  2. 健康リスクの増大:排出されるPMの中でも、粒子の大きさが2.5ミクロン未満であるPM2.5は、肺に深く吸い込まれやすく、肺がんや喘息、気管支炎などの肺疾患を引き起こす重大な健康リスクとなります。
  3. 簡易ボイラでの課題顕在化:燃焼機器による排ガスの2次対策が困難な簡易ボイラにおいては、これらの有害物質の排出を抑えるために、特に高品質燃料の使用が求められます。

乾燥による排気性能の向上と環境負荷低減

バイオマス燃焼による大気汚染リスクを抑制するためには、プラントでのエミッション対策とともに、低水分・低細粒割合とした「高品質燃料」の利用が有効な対策の一つとなります。

以下に、高品質燃料と排気性能の関係を検証した試験データを示します(FNR, HANDBUCH ZUM QUALITÄTSMANAGEMENT VON HOLZHACKSCHNITZELN, 2017)。

林地残材チップを用いた試験において、水分51%W.B.・細粒割合17.7%の処理前チップと、乾燥およびふるい処理によって水分13.2%W.B.・細粒割合2.6%まで品質を向上させた処理後チップについて、処理の前後でチップ燃焼を行っています。

表 林地残材チップの処理前後のパラメータ 
注1)細粒割合:粒度分布において、3.15mm以下の微細分が含まれる割合。
注2)サイズ区分:ドイツのチップ規格であるDIN EN ISO 17225-4によるチップの粒度分布を示す区分
注3)チップ区分:同上の規格により規定される品質表示

これらのチップを50kWおよび30kWの小型チップボイラで燃焼させた結果、高品質な処理後チップを使用することで、CO、NOx、PMの排出量が減少することが確認されました 。この結果からも、高品質なチップが環境性の向上にも役立つことが分かります 。

図 処理前後のチップの燃焼試験結果

地域環境に配慮した高品質燃料の選択

乾燥によって品質を安定させるメリットは、単なる効率化だけではありません。捨てればゴミとなる木質バイオマス燃料の利用において、乾燥させた木質燃料の使用は、不完全燃焼を防ぎ大気汚染物質の排出を抑えるという多面的な重要性を持っています。事前の乾燥処理は、供給側だけでなく需要側にもメリットをもたらし、地域社会の健康と環境を保全しながら持続可能なエネルギー利用を実現するために不可欠なプロセスとなります。

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