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【連載:発酵熱乾燥のいろいろ】第6回:現場で役立つ透湿防水シートの被覆方法と取回し改善のコツ

2026年5月12日

実務における課題:シートの「重さ」と「効率」

第5回までは、発酵熱乾燥の理論や安全管理について解説してきました。透湿防水シートは、屋外でチップの水分を下げるために非常に有効なツールですが、導入を検討される現場の皆様からよく伺うのが「シートが重く、作業が大変ではないか」という懸念です。

確かに、一般的なブルーシートに比べ、耐久性と透湿機能を備えた不織布構造の透湿防水シートは厚みがあり、重量も増します。手作業だけで広大なチップ山を覆うのは、現場にとって大きな負担となりかねません。今回は、実証試験を通じて見えてきた、重機や専用器具を活用した効率的な敷設方法と、取回しを改善するための工夫についてご紹介します。

重機と単管パイプを活用した「掛け剥がし」の効率化

シートの重さを解消し、少人数で安全に作業を行うためには、現場にある重機(グラップル等)を積極的に活用するのが現実的です。試験では、以下のような手法で作業時間の短縮と負担軽減を確認しました。

  • 単管パイプとクランプの活用
    シートの端に6mの単管パイプをクランプを用いて固定し、それを重機で掴んで展開する手法です。パイプを芯にすることで、重機がシートを「面」として捉えやすくなり、破れを防ぎながらスムーズに引き出すことが可能になります。
  • バケットへの切り込み加工
    バケット付グラップル等を使用する場合、パイプを掴みやすくするためのわずかな加工を施すだけで、シートの掛け剥がし作業の精度が向上します。

巻取機の導入によるスピード向上:50mを約2分で

さらに運用の効率化を追求し、シートの回収・保管をスムーズに行うための「巻取機」の試作・検証も行っています。

  • 巻き取り時間の短縮
    50mの長尺シートを用いた試験では、専用の巻取機と2〜3名の作業員で、わずか2分20秒ほどで巻き取りが完了しました。手作業で折り畳む場合に比べ、労力の削減に繋がります。
  • 自立性と安定性の向上
    巻取機の脚部を強化し、作業者がおもしとなって安定させる構造にすることで、アスファルトの上など平坦な場所であれば、ズレの少ない綺麗な巻き取りが可能となります。

排水性を最大化する「設置の基本」

取回しの工夫と同時に、第4回で解説した「排水」の仕組みを機能させるための基本的な設置ルールも改めて整理します。

  • 頂部を鋭角にし、45度の傾斜をつける
    シートを被せるチップ山は、山頂部を尖らせ、斜面を急にします。水平な部分を作らないことが、雨水の浸入を防ぐために重要です。
  • シワとたるみの解消
    重機で引き出した後は、シートに大きなシワがないよう調整します。シワに水が溜まると、そこから徐々に水分が浸透し、乾燥を阻害してしまいます。

長持ちさせるためのメンテナンス

透湿防水シートの性能を維持するためには、定期的な点検が欠かせません。

  1. シートのめくれ確認
    シートを土嚢や丸太などの重しで固定することで捲れを防ぐことができますが、台風のように強風でシートが煽られる場合は山の左右にある重し同士をロープで縛ってシートが飛ばないようにします。
  2. 破損の早期補修
    重機の爪などでシートに小さな穴が開いた場合は、専用の補修テープですみやかに塞ぎます。小さな浸入口からでも雨水は浸水し、乾燥ムラの原因となるためです。

まとめと次回の予告

第6回では、現場での物理的な取回しを改善するための実務的な工夫をご紹介しました。重機や器具をうまく活用することで、「重いシート」を「扱いやすい道具」へと変えることができ、作業効率と乾燥品質の両立が可能になります。

運用のコツを掴んだところで、次回からはより踏み込んだ科学的なデータに焦点を当てます。第7回では、乾燥のプロセスで避けて通れない「有機物損失」について解説します。水分が下がる一方で、チップ自体がどれくらい目減りし、最終的なエネルギーはどう変化するのか。経済性の観点からも重要なテーマです。

※本記事は、令和3~5年度 林野庁補助事業「地域エコシステム」技術開発・実証事業の成果報告に基づき構成されています。

『第7回:発酵によるチップのエネルギー量の変化』を読む

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